あらた(2733) 投資レポート¶
会社概要¶
株式会社あらたは、2002年4月にダイカ、伊藤伊、サンビックの統合により設立された、化粧品・日用品における日本最大級の卸商社です。東京証券取引所プライム市場に上場(証券コード:2733)しており、本社は東京都江東区に所在しています[1]。
基本情報¶
- 設立
2002年4月1日
- 資本金
85億7,200万円(2024年3月末)
- 従業員数
連結2,893人、単体1,965人(2024年3月末)
- 本社所在地
東京都江東区東陽6丁目3番2号 イースト21タワー
- 平均年収
597万円(2024年3月期)
- 平均年齢
42.9歳[2]
事業内容と収益構造¶
事業概要¶
あらたは、日用雑貨や化粧品を中心に、メーカーから商品を調達し、物流センターで仕分けを行い、小売業者に配送・販売する卸売事業を主力としています。
- 調達先
国内外のメーカー約1,600社
- 取扱アイテム数
約12万種類
- 販売先
国内のドラッグストア、ホームセンター、スーパーマーケットなど約5,000社、55,000店舗[3]
取扱商品カテゴリー¶
ヘルス&ビューティー(化粧品、口腔ケア製品など、全体の約30%)
紙製品(ティッシュ、トイレットペーパーなど)
ハウスホールド(洗剤、家庭用品など)
ホームケア(掃除用品など)
ペット用品
その他日用品[4]
収益構造¶
直近の売上高は9,000億円を超え、売上総利益率は過去5年間で10~11%の範囲で推移しています。販管費率は売上高に対して9~10%前後を維持しており、物流効率と在庫管理が利益に大きな影響を与える事業構造となっています[5]。
業績推移¶
最新業績(2025年3月期 第3四半期累計)¶
- 売上高
7,545億円(前年同期比4.9%増)
- 営業利益
131億円(同5.4%増)
- 経常利益
137億円(同6.0%増)[6]
過去の業績推移¶
直近2年間は売上高・利益ともに成長を続けており、2024年3月期通期では:
- 売上高
9,441億円(前期比5.9%増)
- 営業利益
145億円(同13.2%増)
- 経常利益
153億円(同12.1%増)[7]
2025年3月期 通期予想¶
- 売上高
9,690億円(前期比2.6%増)
- 営業利益
163億円(同12.4%増)
- 経常利益
166億円(同8.2%増)
- 親会社株主帰属当期純利益
110億円(同6.6%増)[8]
株価情報と投資指標¶
株価推移(2023年4月~2025年4月)¶
過去2年間の株価は上昇トレンドを示し、2023年4月の約1,900円台から2024年10月には3,650円台まで上昇しました。その後、若干調整し、現在は3,190円前後で推移しています[9]。
投資指標(2025年4月現在)¶
- PER(株価収益率)
約9.7倍(会社予想ベース)
- PBR(株価純資産倍率)
約0.93倍
- 配当利回り
約3.2%(予想)
- 1株当たり配当金(予想)
102.00円
- 配当性向
30.5%[10]
業界動向と競合状況¶
業界の特徴¶
日用品・化粧品卸売業界は、メーカーと小売店の間に立ち、物流効率化と商品調達の専門性によって付加価値を提供する産業です。近年はEコマースの台頭や小売業態の多様化によって、卸売業者の役割も変化が求められています。
競合状況¶
- 主要競合
PALTAC(東証1部、8283)
- 業界シェア
あらたとPALTACの2社で国内日用品卸売業界の約50%を占める
- 3位企業
中央物産を主力とするCBグループマネジメント(東証1部、9852)[11]
PALTACとあらたの2社が業界をリードする構図が続いており、取扱商品のカテゴリーや顧客基盤に若干の違いがあるものの、基本的な事業モデルは類似しています。
成長戦略¶
あらたは「中期経営計画2026」を策定し、2026年3月期を最終年度として以下の目標に取り組んでいます。
数値目標(2026年3月期)¶
- 売上高
1兆円
- 経常利益
200億円
- ROE
10%台
- 配当性向
30%[12]
主要な成長戦略¶
卸事業の強化
ヘルス&ビューティー・ペットカテゴリーの市場シェア拡大
カテゴリー戦略の継続実施
専売・優先流通品の拡大
専売品および優先流通品比率の向上(2024年3月期で売上構成比7%)
ブランド力強化と利益率向上
海外展開の推進
中国(広州)での現地法人設立
パートナー企業との連携による市場開拓
新商品・ブランド開発
子会社を活用した新コスメブランド「3650」の立ち上げ
オリジナル商品開発による差別化
IT・DX推進
業務効率化・物流生産性改善によるコスト削減
先進的な物流システム導入[13]
投資のポイント¶
強み¶
- 業界内での強固な地位
日用品・化粧品卸売業界において、PALTACとともに2強の一角を占め、全国規模の物流網を保有
- 安定した収益基盤
生活必需品を扱うため、景気変動の影響を受けにくく、安定した業績を維持
- 成長分野への注力
ヘルス&ビューティーやペット用品など成長カテゴリーに積極投資
- 株主還元策の充実
配当性向30%を目標とし、安定した配当を実施
- 専売品戦略
専売・優先流通品の拡大により、利益率向上と差別化を推進[14]
リスク要因¶
- 物流コストの増加
人手不足や燃料価格上昇による物流コスト増加リスク
- 小売業界の構造変化
Eコマースの台頭による従来型小売業の縮小可能性
- 競合激化
PB(プライベートブランド)商品の拡大による卸売業の付加価値低下リスク
- 海外展開の不確実性
中国などへの展開における現地競合との競争
- デジタル化への対応
IT・DXへの投資が遅れた場合の競争力低下リスク[15]
バリュエーション評価¶
現在のPER約9.7倍、PBR約0.93倍は、東証プライム市場の平均と比較して割安な水準にあります。また、予想配当利回り3.2%は比較的高い水準であり、株主還元に積極的な姿勢を示しています。[16]
投資判断材料¶
投資魅力点¶
- 安定性
安定した生活必需品市場を基盤としたビジネスモデル
- 成長戦略
中期経営計画に基づく明確な成長戦略
- 株主還元
割安なバリュエーションと魅力的な配当利回り
- 差別化要因
専売品拡大による高付加価値化と差別化戦略
留意すべき点¶
- 業界動向
業界再編や競争環境の変化に対する対応力
- コスト変動
物流コストなどの変動要因による利益率への影響
- 計画進捗
中期経営計画の目標達成に向けた進捗状況の継続的な確認
まとめ¶
株式会社あらたは、日用品・化粧品卸売業界のリーディングカンパニーとして、安定した収益基盤と成長戦略を兼ね備えた企業です。生活必需品を扱う特性から景気変動に左右されにくく、専売品拡大や海外展開などの成長戦略を推進しています。
現在の株価水準は割安感があり、配当利回りも魅力的なことから、安定成長と株主還元を重視する長期投資家にとって検討に値する銘柄と考えられます。一方で、デジタル化の進展や物流コストの変動など、業界環境の変化には継続的な注視が必要です。
参考文献¶
以下の情報源を参考に本レポートを作成しました。